« 麦の穂をゆらす風 | トップページ | ウィンター・ソング »

幸福な食卓

Kofukunashokutaku
85点
公式サイトhttp://www.ko-fuku.jp/
試写会場: 新宿ミラノ座(at 東京国際シネシティ フェスティバル)
監督: 小松隆志
主演: 北乃きい 、勝地涼 、平岡祐太 、さくら 、羽場裕一 、石田ゆり子
製作国:日本 (2006年)

<ストーリー>
「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」という、父親(羽場裕一)の衝撃的な発言で始まった今日の中原家の朝食。
中学生の娘の佐和子(北乃きい)と、高校卒業後大学進学を急に辞めて今は農園で働いている直ちゃん(平岡祐太)は、父のその言葉を受け止めるしかなかった。
3年前に教師だった父が自殺未遂してから、中原家は家族崩壊し、母親(石田ゆり子)は家を出て近くに一人でアパート暮らししている。
多感な年頃の佐和子だったが、家族に対する気持ちは決して表に出さなかった。そんな佐和子のクラスに、明るい性格の大浦勉学(勝地涼)が転校生としてやってきて、クラス委員の佐和子の隣の席に座る。
佐和子とは育った環境も正確もまったく違う大浦と佐和子は次第に惹かれあって、切磋琢磨して生きて行き、佐和子の心にも幸せが訪れるが、、、。
(公開が先のため、ストーリーはここまで)

<感想>
ちょっと奇抜で、普通にはありえないストーリーですが、現代の日本の家庭のあり方や、現代人の心を的確にとらえていて、私はものすごく気に入りました。
ちょっとネタバレになっちゃいますが、この映画にも登場人物の「死」があります。
でも、今年観た邦画では、例えば『ただ君を愛してる』とか『虹の女神』は、一人の人間の死は、恋人である人間にしか意味をなさないのに対し、この映画は一人の人間の死のおかげで、もっと多くの人が救われます。
原作は読んでいませんが、このストーリーのすごいところはそこだと思います。
生き物の生死には全て意味があるという言葉をよく耳にしますが、この映画はそういうことを端的に語ってくれて、ましては主人公がまだ若いということもあり、最近の邦画ブームにさらなる発展をもたらしてくれるでしょう。
最近イジメを理由に自殺する若者や、人生に愛想を尽かして自殺する中高年が多いですが、そういう方に是非観ていただきたい一本です。

ここからはネタバレなので、反転させます。
明日がクリスマスで、幸せいっぱいの佐和子を写す画面から、突然葬式に画面が変わったときは、大浦のおじいちゃんか誰かが死んで、それで一緒にクリスマスを祝えなかっただけかと思った(前におじいちゃんが持ち直したって言ってたから)。
それが大浦自身の葬式だと知ったときは、あまりの展開に本当にびっくりした。
16歳で彼氏と死に別れするって、どんな気持ちなんだろうって、佐和子が可愛そうで仕方なかった。
私は16のとき、彼氏なんていなかったから彼女の気持ちがわかんないけど、私ならきっと布団からしばらく出てこれないと思う。
佐和子が父に向かって言う「死にたかったお父さんが助かって、生きたかった大浦君が死ぬなんて変だ!」っていう言葉は、今現在沢山いる自殺志願者に対する強烈なメッセージだと思う。
普通の映画なら、このまま悲劇で終わってしまうところだが、この映画の素晴らしいところは、佐和子が若いだけに、大浦の肉体はこの世から消えても、大浦が佐和子にくれたやさしさや言葉を心の支えにして、立ち直るところ。
人間の死は、決して無駄にはならないんだなあ、ってこの映画で実感できた。

最近観た映画の中では、生きていく上で一番お勉強になった作品です。

|

« 麦の穂をゆらす風 | トップページ | ウィンター・ソング »